キャッチ&リリースの効果
てきめん! 二年目の寒河江川


 トラウトフォーラムは、魚を残し、釣りを楽しみながら釣り場を良くする方法のひとつとして、キャッチ&リリース(以下、C&R)の実施をアピールしてきました。昨シーズンのC&R区間設定以降、私たちの予想をも越える効果をあげているのが、山形県の寒河江川・大井沢地区8キロ区間。
 
地元・漁協・釣り人の三位一体で実現したC&R設定から1年を経て、釣り人にとって満足できる川になっただけではなく、地元住民にも利益をもたらすなど、人と魚が共存できる釣り場づくりという大きな課題をクリアしつつあります。
 
今年7月の「第3回スポーツフィッシング大会」開催にあわせて、そんな「2年目の寒河江川」を現地からレポートします。 (報告/編集局 大谷)

釣り人が増えているのに
魚も増えた大井沢地区


 「渓流魚ノーキル区間(C&R区間)」を設定して丸1年。昨年からの寒河江川上流・大井沢地区での放流量は、9月にニジマス・イワナ成魚100キロ、イワナ稚魚2万匹、10月にニジマス350キロ。川の規模を考えるとかなり少なめだ。にもかかわらず、今シーズンは確実に魚影が濃い川になっている。
 
道路から眺める川の光景は、去年と少しも変わっていない。しかし、川辺に降り立った途端、大きな「変化」を実感する。ここぞというポイントでニジマス、イワナが飛び出す。よく見ると日中のライズも少なくない。釣れる魚はヒレがすっかり回復した美しい姿。「C&Rの効果は、こんなにスゴイのか!」。
 
そうした風評は、多くの遠来の釣り人をこの川に呼び込むことになる。入漁券の販売数は、6月の時点で、昨年の総売上をすでに上回った。ベストシーズンを迎えると、18軒ある地区内の旅館・民宿は、週末ほぼ満室。長引く不況による観光産業の不振が全国で叫ばれる中、この小さな集落に、C&Rは大きな経済効果をもたらしたといえる。
 
豊かな緑、美味しい山菜料理とソバ、親切な宿、そしてたくさんの魚を育む川。ここを訪れるほとんどの釣り人はそれ以上のものを望まないし、求めないのではないだろうか。

今年もたくさんの人が参加した
「月山スポーツフィッシング大会」


 7月18日(土)・19日(日)、第3回月山スポーツフィッシング大会開催。昨年同様、首都圏を含む各地から多数の参加者が集まった。
 
減水傾向ではあったが、7月を迎えても釣りの好調さは変わっていない。ふつうは、すっかり釣りきられてしまうこの時期に、大きめの淵で大型ニジマスが群れをなして悠然と泳いでいる。大会前日に500キロの追加放流がなされたが、フライフィッシングで釣れるのは、昨年以前に放流されたと思われる美しい魚体が多い。大きな毛鉤を追う大きな魚。大型トラウトにラインをぶっ千切られ、笑いながら悔しがっている釣り人……。
 
昨年は、大会直前の放流魚が多かったためか、フライフィッシャーはかなり苦戦した。しかし今年は、ドライや水面直下にこだわる釣り人にも、きれいな良型の魚がヒットしていた。
 
参加者の満足度のレベルアップは著しく、こうした大会の成功にもC&R区間設定の果たす役割が大きいことを実感できた。記録的にもルアー部門・フライ部門はほぼ同等。また、大会ではあわせて百数十名の釣り人が一斉に川に入ったにもかかわらず、ほとんどゴミを見かけなかったことも印象的だった。
 
今回の大会に際しては、トラウトフォーラム・西山徹代表が大会前日に大井沢小学校体育館で講演会を行い、大会後にはフィッシングスクール・デモンストレーションの講師をつとめた。また6月に続き、ビデオ撮影クルーも現地に入った(各コラム参照)。今後もさまざまな動きに合わせて、トラウト・フォーラムは可能なかぎりのバックアップを行っていきたい。
 

はたしてC&R区間設定は、
難しいことなのだろうか。


 山形県の地元釣り人グループ、最上川第二漁協、西川町役場、大井沢地区住人、山形県水産課。今、これだけの人々が「渓流釣りのパラダイス」寒河江川づくりに、いっそうの意欲を示している。
 
実は今シーズンを迎えるまで、関係者の多くが期待とともに「果たして効果が現れるのだろうか」という多少の不安を抱いていたらしい。ところが今や「なぜこんな簡単で効果的なことが今までできなかったんだろう」という、うれしい当惑を感じているという。従来行ってきたトラウトの増殖・放流活動に費やす努力より、C&R区間の実施はある意味でリーズナブルでさえあるからだ。
 
もちろん、国内の先例がほとんどないため課題は多い。現行の漁業法下では、C&Rを制度化するのが難しいという大きな問題もある。そのため、C&Rも、あくまでも釣り人への「お願い」という、やや中途半端な形を取らざるを得ない。
 
そうした状況のなかでも、出資者を募った看板設置などのアイデアを得て、C&R区間周知の努力が続けられている。釣り雑誌などメディアの注目度も高い。しかし、地元の釣り人によると、釣り人の相互監視が働きやすい場所ではかなりC&Rが励行されているが、それ以外の場所で大量の魚を持ち帰る釣り人はまだ少なくないという。遊魚券販売場所・方法などにも課題は残る。
 
こうした問題に対して、漁協では、遊漁券不携帯者の一掃、監視体制強化を明言し、西川町のファミリーマートでの遊魚券販売も今年から実施されている。
 
また行政サイドでは、今年から網漁具の使用禁止を定め、今後、正式なC&R制度化への道筋を作りたいという。実は「これから」が正念場といえる。
   
めざすのは、つねにこの川で再生産されたネイティブトラウトがいる釣り場。もちろん、釣り人にはバーブレスフック・シングルフックの使用や適切なリリース方法を実行していく努力が求められている。
 
来年、再来年、そして10年後。「渓流釣りのパラダイス」寒河江川を作っていくのは、この川を訪れる一人ひとりなのだ。

C&Rの効果を知りたい
なら、ぜひ、寒河江川へ。


 山形県では、月光川、寒河江川に続き、来年より最上白川でもC&R区間設定が実現する予定。また、たびたびお伝えしているように、全国の各河川でC&R区間設定の動きが活発化している。今号では長野県天竜川支流・太田切川のニュースをお伝えできた。ところが一歩手前でなかなか実施に踏み切れないというケースが多いという。
 
そのほとんどが「どのようなメリットがあるのか」を、地元や漁協、行政等の各関係者がなかなか実感できないことが障害となるようだ。「たとえリリースしても、ほとんどの魚は死んでしまうよ」という意見もまだまだ根強いと聞く。
 
トラウト・フォーラムでは、こうした方々に、寒河江川・大井沢地区を訪れることをお勧めしたい。
 
C&Rの実施が川と地元にもたらしたもの……その事実を確かめていただくために。「魚も、人も集まる川」。その素晴らしさをこの川を愛するたくさんの人々が、笑顔で語ってくれることだろう。

第3回月山スポーツフィッシング大会の前夜に
西山徹トラウト・フォーラム代表の講演会が行われました。


 「おばんでございます」。不思議に温かく聞こえるそんな挨拶に続いて、西川町商工観光課・渡辺氏、大井沢区長・佐藤氏、最上第二漁協組合長・高橋氏、山形県水産課・鈴木氏(当日挨拶順)が、一人ひとりの寒河江川に対する熱い思いを語る。そして、西山徹TF代表が登場。
 
昼間、久しぶりの寒河江川でロッドを出した西山代表は、ニュージランドの川を例に出しながら「2年目の寒河江川」から受けた強い感動をユーモアたっぷりに語りました。また、野生の魚との付き合いには「ホドホドに釣る」釣り人の自制心が求められることを主張。「4〜5年ガマンすれば、間違いなく凄い川になりますよ」
 
講演後の質疑応答では、高橋組合長が魚の放流時期・方法、さらに監視体制などについて、数々の質問と新たな提案を行い、その意気込みに西山代表と会場につめかけた釣り人がやや圧倒されるシーンも。特に「(放流に頼るのではなく)たくさんの魚が繁殖できる川にしていきたい」という発言には会場から拍手が沸き起こりました。
 
また、大井沢区長・佐藤氏は、砂防堰堤の影響で、年々川床が下がっている事実を指摘され、「釣り人のみなさんも、この事態に対してどんどん声をあげてほしい」と要望。現在の寒河江川が地元の多くの人の愛情と熱意に支えられていることを改めて実感できたイベントでした。

TFビデオ第2段:「キャッチ&リリース二年目の寒河江川」
只今、鋭意制作中!


 現在、トラウトフォーラムでは、寒河江川を舞台にしたビデオを制作しています。ロケは、6月と7月のベストシーズンに実施。C&Rによって、川がどのように変わってきたか……その“現実”にテーマを絞って、地元の人の川への思いなども盛り込み、あくまで客観的視点からC&Rの効用をレポートする作品となる予定です。
 乞う、ご期待!
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