T F ・REPORT

主 張 す る 釣 り 人 養 成 講 座

「キャッチ&リリースと尾数制限」

本文まとめ/TF事務局:木住野勇

"気持ちよく釣る権利"を主張するためには、まず、私
たち釣り人自身の 義務と権利を知ることから始めなけ
れば なりません。 この講座では、釣り人に関係する
法律や規則などを、できる限りわかりやすく説 明して
いきます。第4回は、キャッチ&リリースと尾数制限
を、法的に制度化できるか、について検 証します。

釣り人が増えてもある程度魚が残り、再生産が期待できる方法として釣った魚 を持ち帰れない「キャッチ&リリース区間」が日本でも誕生し始めました。しか しキャッチ&リリース区間の施行には、「遊漁規則に盛り込めない」とか「法的 な拘束をしにくい」など、現状の制度の下ではいろいろな難しさがあります。法 的な拘束力で制度化されたからといって、それだけで問題が解決するわけではあ りませんが、なぜキャッチ&リリースが制度化しにくいのかについて、検証して みます。


キャッチ&リリースは
法の中でどのような
扱いになっているか?
 釣り人が直接関わる規則は漁業協同組合(以下漁協)が定めた「遊漁規則」と 都道府県が定めた「内水面漁業調整規則」(以下調整規則)で、その元になって いるのは法律としての「漁業法」と「水産資源保護法」(以下法)だということ はTFJ12号でも述べました。

私たちトラウト・フォーラムが推進しているキャッチ&リリース(釣った魚を 再放流する)は法の中でどのような扱いになっているのでしょうか。

 「漁業法」を調べても「キャッチ&リリース」とか「釣った魚を再放流する」 という項目は見あたりません。もともと、それ自体の定義がないのです。なぜな ら「漁業法」は魚を捕るための法であり、魚を捕るということを前提に漁業と遊 漁(釣り)という行為は存在し、魚を捕らない漁業や遊漁は存在しないことにな っているからです。言い換えれば「釣った魚を再放流するのなら、何を目的に釣 りをするのか?」ということらしいのです。

 では、釣った魚をすべて再放流すれば「遊漁」(釣り)という行為にならない かというと、そうではありません。これはこれで「魚を釣る意志があれば」、ま たは「魚が釣れてしまう状態(糸に釣り鉤が付いているなど)であれば」、れっ きとした「遊漁」(釣り)ということになります。

 こんな場合はどうでしょうか。

 「釣った魚を再放流する行為」として、ごく一般的に行われているケースを考 えてみます。たとえば、遊漁規則などで定められた全長に満たない、小さな魚を 釣ってしまったときの「再放流」という行為が現実にあります。「漁業法」で は、この行為自体も一般的に理解されているように「小さい魚が釣れたら再放流 すればいい」のではなく、そもそも小さい魚は「釣ってはいけない」もしくは 「釣る意志を持ってはいけない」ということになっています。

 もし万が一釣れてしまったら、「すぐに流れに戻してその場を離れ」なければ ならず、「全長に満たない魚が釣れそうな場所では釣りをしない」ということだ そうです。(まったく現実的ではありませんが、ここでも再放流という行為は存 在していません。あくまで「魚を捕る」ことが「遊漁」=釣りの目的になってい るのですから。)


 ・・・とまあ、釣った魚を再放流しなさい、という規則をつくること自体、法 的には難しい面があるということがわかりました。けれど、法が定められた昭和 20年代と比べると、現在は釣り人の数も激増し、1日100匹単位で釣れるほ ど釣り具も進化しています。いくら漁協(漁業権者)に増殖義務があっても、釣 り人みんなが釣れた魚のすべてを持ち帰ってしまったら、増殖(放流)も間に合 うはずもありませんし、河川そのものも当時と比べたら格段に生産力が落ちてい ます。

 特に釣り人の多く入る首都圏近郊の河川などでは、キャッチ&リリースをする 釣り人がいるから釣り場が維持されている、というところもかなり多くあるよう に思います。


 現状の遊漁(釣り)に関わる制度自体が、現実とまったくフィットしていない という事実を、ここまででご理解いただけたと思います。では、実際に釣り場の 現状(放流直後に釣りきられて魚が残らない状態)を改善する、合法的な方法は 他にはないのか、ということを調べてみました。


遊漁規則での
尾数制限は法で
認められている
釣りを楽しみながら釣り場に魚を残すための方法として、キャッチ&リリース と並んでもうひとつ、釣り人が持ち帰る魚の尾数を制限する、という方法が考え られます。この尾数制限という考え方を、現在の体制の中で法的に制度化するこ とはできるのでしょうか。

 昭和37年に水産庁長官の「遊漁規則認可の基準について」という通達があり ます。その中で「組合が漁業権行使規則で組合員に課している一般的制限、例え ば漁場の区域、採捕期間、体長又は採捕尾数の制限等を遊漁者に課すことは不当 でない。」ということが述べられています。 つまり「組合員に尾数を制限した ら遊漁者(釣り人)にも制限をしてもよい」ということです。

 この項を利用すれば、遊漁規則で尾数制限をすることは可能です。つまり、魚 を大量に殺して持ち帰る行為を、遊漁規則で防ぐことが出来るわけです。

 遊漁規則の中での尾数制限は、実は今までほとんど行われていませんでした。 しかし、昨年 から山梨県の河口湖漁協が、ニジマスについて1日15匹という制限を遊漁規則 の中で設けています。もちろん組合員の漁業権行使規則の中にも同じ制限が記載 されています。

 「監視のしにくい河川などでは管理しにくいから・・・」 という理由で、尾 数制限は難しいと言う方もいます。でも、交通ルールだって制限速度があるにも 拘わらずスピード違反をする人はいます。要は一つの基準があるということが大 事なのではないでしょうか。より多くの漁協が尾数制限を設ければ、釣り人に 「ルールの中で釣りをしている」「釣りをするには一定の制限があるんだ」とい う自覚を促すことができます。管理がしにくいという理由でルールを設けないと いうのではなく、ルールを設けた上で、どうやって管理するかということが大切 なのではないでしょうか。



 今回はキャッチ&リリースと尾数制限が、法のなかでどのような扱いになるか を述べました。次号では、具体的に規則に盛り込まないでも可能なキャッチ&リ リース区間の実例と、実現可能な方法を検証してみたいと思います

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