日本の鱒釣りの現状を知る。第4回/西日本篇
北海道にはじまり列島を縦断してお届けしてきたこの特集も、
4回目の今回が最終回。鱒釣りの新時代を告げるような試みに
意欲的に取り組む釣り場がなぜか多い西日本地区から
気になる動きをピックアップし、現地取材二つを含む
五つのレポートで構成してみました。
report1
熊本県 川辺川プロジェクト(仮称)
前号で熊本県の会員宮崎亨さんたちが、球磨川支流川辺川においてC&R区
間設定をめざす仮称・川辺川プロジェクトを報告しました。
今回、編集部では宮崎さんたちプロジェクトのメンバーとお会いする機会を
得て、活動開始の経緯、その後の進展などについてお話しをうかがうことができ
ました。
当日、集まっていただいたのは、熊本市に住む宮崎さん、芝田哲夫さん、歌
野毅さん、そして、地元・五木村在住の島巻弘充さんの4名です。
■メンバーが集まるまで
小児科医・宮崎さんと薬剤師・芝田さんはお仕事の上でもパートナー。仮称・
「川辺川プロジェクト」は、そんな二人のボヤキからスタートしました。
宮崎「芝田さんとは、五木村にもよく釣りに行ってました。そんな彼といつも
『つれないねー』とブツブツいっていたことが、そもそもの始まりです」
芝田「で、自分たちでなんとかできることはないかと、二人で熊本市内にあるシ
ョップ「ススキ」に相談にいきました。そこで、島巻さんと歌野さんという強力
な二人を紹介されたんです。今から考えてもラッキーでしたね」
歌野さんは、熊本のタウン誌の編集者。九州地区全般の釣り場情報に詳しく、
釣り雑誌にもペンネームで連載記事を書いています。4人の中では、トータルな
視点からのアドバイザーといった役割を果たしているように見受けられました。
歌野「アタマがデカくて、ヒレは鮮やかなオレンジ色。そんなほれぼれする美し
さをもつ天然ヤマメが川辺川にいます。しかし、今、確実に減っており、釣り人
と魚のバランスが確実に崩れていくのを実感しています」
島巻さんは五木村出身。東京、熊本で旅行代理店の仕事をされた後、3年前故
郷へ。そのキャリアを買われて現在、村の観光協会の仕事にも携わっています。
現在、宮崎さんたちと地元とのパイプ役となって中心的に動いているそうです。
そこで、以下は島巻さんのお話を中心にうかがい構成しました。
■C&R区間の設定・その後
島巻「前号でお知らせした通り、当初本流の約4kmの区間をC&R区間として
予定していました。ここは河原が広い里川で、水生昆虫も豊富。フライフィッシ
ングには絶好の釣り場だったんですが……。その後の経過で川辺川ダムの建設予
定地にひっかかってしまうことが判明。また、ダム建設に伴って川辺川沿いの国
道工事も進められるということなので、本流はあきらめることになりました」
新しく設定しなおした予定地は、川辺川支流の下梶原川約10kmの区間です。
島巻「ここは典型的な山岳渓流。釣り場としての魅力が大きい本流をあきらめざ
るを得なかったことは残念です。が、区間としては倍以上になりましたし、ヤマ
メの魚影も濃い。ある意味では日本独特の渓流釣りの面白さを存分に味わえるロ
ケーションといえます。現在、村にこの区間設定についての話を下ろしているん
ですが、今のところ、なかなかいい感触を得ていますよ。できれば、区間設定と
同時に放流事業自体も村役場でキチンと管理していく体制づくりをしていきたい
とも考えています」
概ね好意的に受け止められているC&R区間の設定ですが、問題となるのは
「C&R区間で果たして人が呼べるのだろうか?」という、村の人々からの素朴
な問いかけ。
島巻「村の人々が心から納得できるような釣り場としての成功例のデータを数多
く集めたい。自分たちでもいろいろ探しているのですが、この件に関しては、ぜ
ひ、TF会員の方々の協力をお願いしたいのです」
というのも今、五木村では、「五木村ルネッサン村」という自然を生かした村
づくりを進めています(島牧さんも理事として名を連ねています)。今回のC&
R区間の設定もこのプロジェクトの一環として取り組むことになる予定で、その
際、村にとってどれだけの“経済効果"があるかが問われてくるわけです。
島巻「五木村では、入漁料を払わないエサ釣りの人(もちろん村外からの)が多
く、今の状態のままでは村の人々にとって良いことは何も無いんですよ。彼らは
何も文句をいっていませんが……でも、その状況を改善することには村としての
異議はありません。あとはC&Rやフライフィッシングへの理解を得ることが課
題なんです」
■五木村の人々
ところで、五木村は、あの川辺川ダム建設の問題で、30年間以上揺れ続けてき
た場所でもあります。今回のC&R区間の設定のように、地元の川について外部
の人間の働きかけがあることを村の方々はどのように受け止めていらっしゃるの
でしょうか?
島巻「自然は都会人のものではないが、地元のものだけでもない ─私も少々驚
いたのですが、五木村民の間にはそんな健全な考え方が浸透しています。今回の
C&R区間の設定にしても、そんな村民のみなさんのあたたかさにバックアップ
されている面が多々あります。謙虚で、あたたかく、村の外から来た人間へのサ
ービス精神がある……五木にはそんな村民気質があるんです」
五木村で生まれ、現在そこに住み、村の人々とともに計画を進める島巻さんの
言葉から、釣り場づくりにおける地元の人々との連帯の意味を考えさせられまし
た。
◇
「仮称・川辺川プロジェクト」への協力、および問い合わせは下記まで。平日
は午前9時から12時まで、午後は2時から6時まで、また土曜日は午前9時から
12時半までが診療時間になっています。お電話される場合は、宮崎さんのお仕事
のご迷惑にならないようお願いします。
[連絡先]
宮崎 亨
熊本県熊本市佐土原1丁目10−70
(みやざきこどもクリニック内)
TEL. 096-368-0390
FAX. 096-368-0552
(報告:編集局 大谷)
report2
奈良県十津川における毛バリ釣り
専用河川の経緯について・・・
西山 徹 (東京都)
いやはや難しいものである。そもそものキッカケというのは、十津川漁協の
方から、漁協の活性化を図りたいので何かいい案はないだろうか、という話から
であった。全国各地の河川を管轄する内水面の漁協というのは、台所事情が予想
以上に厳しくて、入漁者からの入漁料収入で漁協の運営はおろか、放流にかかる
経費すらまかなえない所がほとんどなのである。
それではどうやって資金を捻出しているのかといえば、ダムの補償金やら、砂
利採集の権利などに伴う収入などで、運営資金のほとんどをまかなっているので
ある。恐らくは入漁料収入の占める割合が50%未満というところがほとんどな
のであって、残りの資金は、その他の収入から得ているらしいのである。
十津川漁協の場合にも、アマゴ釣りによる渓流釣りの入漁者が年間およそ千
人、メインのアユ釣りが2千人くらいで推移しているらしいので、平均入漁料3
千円としても、9百万円くらいの入漁料収入しか入らない。
そこでキャッチ&リリースをベースにした部分と、組合で養殖している成魚放
流による部分とを設定した毛バリ釣り専用釣り場を提案したワケだが、村の観光
課や村長さんまでもの賛同を得たにもかかわらず、事態は暗礁に乗り上げた格好
になっている。
意外なことに、途中までの進展は思いの他、早かった。近畿の都市圏からほと
んど山道を3〜4時間という立地条件ゆえ、団体客を呼び込むような釣り堀は成
立しにくい。それならばということで、マニアであれば定期的に通うような、質
の高い毛バリ釣り場作りを提案したら、真意は素早く理解された。そして四国の
中野川川まで、漁協のスタッフたちは視察に出向いたほどである。
従来からある、エサによる渓流釣りの人たちは、解禁直後の数釣りができる
ときには集中してくるが、渓流魚を釣り切ってしまい、釣れなくなるとほとんど
来なくなる。従来からの渓流釣りのお客さんは、アユ釣りが始まる前までの一時
しのぎにすぎない、ということを、組合の人たちはよく理解しているのである。
難問が生じたのは、十津川の数ある支流群の中で、どの川を利用するかという
選定に移ってからである。当然のことながら、それぞれの支流沿いには漁業組合
員の方が住んでおり、昔からアマゴ釣りやアユ釣りをしていらっしゃる。その
方々が、もしも毛バリ釣り専用河川などになってしまったら、自分ところの川で
は、従来からやっているアマゴやアユの釣りができなくなるのではないか、と、
反対し始めたからである。
十津川水系には支流がたくさんあるとはいえ、アマゴがよく育ち、管理しやす
くて釣りにも適した川というのは、そうそう幾つもあるものではない。提案した
ボクらとしては、どうせ作るのであれば、できるだけ条件のいい川を使用して欲
しい。ところが、そのような川というのは、従来からあるアユ釣りやアマゴのエ
サ釣りにもいい川なのであって、流域に住む組合員の方々にしてみれば、どうし
ても譲れないのである。
逆に、ここではどうかという、残っている支流というのは、砂利川で水が少な
いとか、険しくて狭すぎるような場所ばかりであって、管理も監視活動もままな
らない。さあ困った、本当に困ってしまった。というのが現状なのである。
十津川の場合でも、結局障害となったのは、地元の漁業組合員たちの“おらが
川意識”である。川と魚は地元の漁業組合員たちのものであり、非組合員である
遠来の釣り人たちのものではないのだ、という意識の前に、事態は遅々として進
展しないままにある。
別にアユ釣りを否定するワケでもない。渓流のアマゴのエサ釣りを否定するワ
ケでもない。例えばアユ釣りに、友釣専用区や毛バリ釣り専用区、コロガシ・投
網専用区などが設定されているのと同じように、渓流にも、それぞれに区分けが
あっても良さそうな時代なのに・・・。しかもそのような真意を、ほとんどの関
係者が理解してくれているのに・・・。いやはや、困りました、というのが現状
なのである。
report3
中野川川の4年間・・・野崎 健一 (高知県)
早いもので高知県土佐郡本川村にある中野川川が毛針釣り専用区になって4シ
ーズンが過ぎた。
入渓者数は1年目428名、2年目628名、3年目804名、本年度900
名を越えるところである。単純計算で今シーズンは平均1日4名強という数に、
我々中野川倶楽部のメンバーは少々驚いている。
本川村漁協の本山専務理事は、当時の組合長とともに独断先行でこのシステム
を推し進めてきただけに、同漁協の組合員や本川村を昔から訪れる釣り人からの
批判の風は、当初からかなり強いものがあったという。
彼自身もこの海のものとも山のものともわからないシステムが、ここまで全国的
なブランドに育つとは思ってもみなかったともいう。また自然環境が舞台という
こともあって、ここを訪れる釣り人のためだけに施設設備に対する多大な投資の
提案を、村の住人として、役場・漁協の幹部として受け入れることもできず、い
つも中野川倶楽部の突き上げによく耐えて頂いたと思う。公私とも多忙な中、魚
の放流、川の清掃、看板立て札の設置等に時間をさいて頂いたし、各マスコミの
対応も大変だったと聞いている。フライフィッシャーが一人もいない本川村でフ
ライフィッシャーからの予約を受け付け、彼らから訳のわからない言葉での状況
の問い合わせに対応して頂いた遊漁者センターの川村さんをはじめ他のスタッフ
の苦労とプレッシャーは並大抵のものではなかった。
そして4年目の今シーズンにおいては、前記の様に入渓者数も順調に延び、3
年間のノウハウも蓄積され、放流魚もネイティブもバイバートボックスによる発
眼卵放流の稚魚もイワナも川全体に行き渡り、魚の量とか漁協の対応など10
0%とは行かないまでも十分満足できるものとなった(プレッシャーの高い魚が
多すぎて釣りずらい……等批判はあるものの)。
しかし知名度が上がるに連れて、近隣近県からの密漁者が増加しその対策に頭
を痛めている。餌をつけた鉤をあたかもテンカラ釣りのような仕草で堂々とアマ
ゴを釣る者、フライフィッシャーが許可証を持ちその連れが潜って魚を取る者、
闇に影に紛れて金突きを使う者、入口やそれぞれの目立つところに立て看板が立
っているのにもかかわらずしらを切る者など、今年は特に多かった。
当初、密漁者に対しては意外と寛容だった漁協も、この4年間でこういうシス
テムの川を管理運営していくのにどれだけの労力とコストがかかるのかというこ
とを認識しはじめ、来シーズンから地元警察とも協力体制を取って毅然とした取
締りをしていくという。
高知県のフライフィッシャーの集まりである土佐フィールドフォーラムもこの
動きを受けて、密漁者に呼びかける立て看板を、この夏の中野川ミーティングの
とき6本寄贈した。〈密漁者の皆様あなたの払う反則金で15キログラムのアマ
ゴを漁協で販売しております〉
〈山歩き、山仕事の皆様川で密漁者の方にあったらあいさつをしましょう。その
後漁協に御連絡下さい。金一封を用意しております〉
〈密漁者の皆様お帰りの際には交通事故にお気をつけ下さい、先日もお急ぎの方
が事故に会いましたよ〉等々洒落っ気を効かしたつもりで、効果のほどは期待で
きるとは思わないが……
今年の11月から4年の工期で24番の上流300Mのところに砂防えんてい
工事も始まり、これからの状況は決して明るいものでもない。しかし地元住民の
要望を無視して我々の遊びを優先することは、現状では得策ではないと思う。そ
れよりも取りあえず我々ひとりひとりが中野川川を訪れて地元住民、漁協、地元
行政にこの川が本当に必要であるということをアピールすることが、重要ではな
いかと思う。
追伸/中野川川の今までの詳しい経緯は、わが釣友澤良木亮一氏が『フライの雑
誌』誌上において、中野川レポート(最新号で6回目)を掲載しているのでそち
らを参照して頂きたい。
追追伸/4月頃には、私自身本川村に居を移し地元の目でこの川を見守っていこ
うと計画中です。
report4
小川川毛バリ釣り専用区の現在と未来

雑誌等で御存じの方も多いと思いますが、
中国山地を流れる中津谷川支流の小川川に吉和村漁協とアングラーズ・プロジェクトによって、
毛バリ釣り専用区が
開設されたのが95年4月29日、同年7月22日の大雨で大水害を被り残念ながら96年
は全面禁漁となりました。当初は規模を縮小して再開の予定だったそうですが、
林道が広島国体の山岳競技の緊急用通路として使われるとの事で、林道工事を優
先的に進めるために、今年は全面禁漁となったそうです。
小川川の現状はというと、林道の方はすでに修復が終わっているとの事でし
た。しかし吉和川から中津谷川へと入る国道488号線が、いまだ車輛通行止めと
なっており時間的な制約もあって、残念ながら小川川の現状を見ることはできま
せんでした。吉和村漁協の福井組合長さんのお話では今年は大きな出水もなく、
いまだ小川川には多量の土砂が残っている、との事でしたが吉和村漁協では来年
度は、毛バリ釣り専用区を復活させるとの事でした。どういった形になるのかは
吉和村漁協の方でも検討中との事で、前案の規模を縮小して入川者数とキープ尾
数を減らすという形か、もしくは別の場所を毛バリ釣り専用区として新たに開設
するか、まだ決定していないとの事でした。決定しだい吉和村漁協とアングラー
ズ・プロジェクトの方からの発表があると思います。
吉和村漁協の方針として、川へは手を加えず自然の回復を待つとの事でした。
林道工事も漁協の指導の下、極力川への影響が無いよう配慮がなされた工事がさ
れたとの事です。福井組合長さんのお話でも、川が元の状態に近づくのには数年
から10年先になるとの事でしたが、小川川は元々毛バリ釣り専用区としての意味
合いと、天然アマゴの保護育成のための川としての意味合いがあり、残念ながら
水害のため川に土砂が流入してしまいましたが、決して短い期間で捉えるべき物
ではないと思います。
吉和川本流には、下流にある立岩ダムからサツキマスが遡上してくるそうで
す。小川川のような川があれば、より素晴らしい魚を生み出してくれると思いま
す。そして、そういった考え方をしてくれる吉和村漁協があるかぎり、小川川の
試みは終わってはいません。長期的な展望に立って川と魚の事を考えている吉和
村漁協を、応援して頂きたいと思います。
今回、取材時にお世話になった広島市にある『ささきつりぐ』の経営者であ
り、アングラーズ・プロジェクトのメンバーである佐々木ヒロ子さんに、水害以
前の小川川の写真を見せて頂きました。あまり落差がなく、ポイントに富んだ素
晴らしい渓相の川でした。
アングラーズ・プロジェクトは小川川毛バリ釣り専用区の開設を吉和村漁協に
働きかけた、中国地方を中心に活動している釣り人の集まりで、その活動は小川
川毛バリ釣り専用区の開設をはじめ、水源へのブナの苗木の植樹等、地道かつ精
力的なものでした。是非とも吉和村漁協と、アングラーズ・プロジェクトの試み
を応援して頂きたいと思います。
(取材日/1996年10月7、8日)

吉和川本流上流部
岸際まで草が被さり、ポイントに富んだ流れを形作っている。

中国自動車道付近
この付近も水害の影響を受けていず、非常に綺麗な渓相をしている。

吉和川と中津谷川の合流点
大岩や流木がいまだ散乱していて、水害の規模を物語っている。

中津谷川下流部
渓流が流れた部分なので、川原は整地されていた。
[連絡先]
アングラーズプロジェクト事務局
広島県南区京橋2-1
(ささきつりぐ内)
TEL. 082-261-4331
FAX. 082-261-8816
(報告&Photo : 編集局 西村)
report5
『トラウト達のサンクチュアリー』はこんなビデオ・・・柳川 利夫 (大阪府)
はじめにビデオの最終作業が大幅に遅れていることをおわびします。
まず、ビデオの解説する前に、これまでの経過を説明しておきます。私と天川
村のニジマスとの出会いは、30年前、中学時代の林間学校で天川村洞川温泉を
訪れたことに始まります。その後も釣りや取材などで天川村に幾度となく出向
き、その都度、温泉街の中を泳ぐニジマスの群れを見てきました。当時、洞川温
泉のニジマスは池の中を泳ぐコイと同じ認識でしたが、西山徹氏から、天川村で
自生するニジマスの話を聞き、「えっ! あのニジマスが……」と驚いてしまい
ました。
1994年11月19日、スタッフが調査に奈良県天川村を訪れたのは、霊峰
大峰山のふもとにも紅葉が始まった頃。ニジマス達は洞川温泉を流れる山上川を
悠々と泳いでいました。「へぇー、このニジマスが自然繁殖しているのか」橋の
上から撮影をしながら思わずつぶやいてしまいました。
“ニジマスはいつやって来たのか?”
天川漁協組合組合長宮田七朗さん(現在は組合長をリタイアされています)に
聞いてみたところ、宮田さんが子供のころには既に川を泳いでいたそうです。ま
た、洞川温泉付近の山上川は古くから禁漁区に指定され、奈良県と天川村が管理
しています。禁漁区の中のニジマスが繁殖を繰り返し現在まで生き延びるのか、
宮田さんに質問してみたところ、いとも簡単に答えが返ってきました。「川の底
を見ればわかるよ…」
宮田さんの指さす川の底には無数の産卵床が見られます。マス族の産卵と言え
ば、人里離れた清流で繰り広げられる“神秘の世界”を想像していただけに、ス
タッフ一同は目の前の光景が信じられない様子でした。産卵は山に紅葉が始まる
ころ、毎年ニジマスは産卵を始め、翌年の春まで続き、桜の咲くころには孵化が
始まるそうです。次にスタッフが洞川を訪れたのは4月の初旬、川底一杯の産卵
床も数えられる程になっていましたが、水中撮影を試みました。産卵床は予想以
上に大きなものでした。産卵床のそばにカメラを水中に沈め、しばらく置いてお
くと、いったん逃げたニジマスの雄と雌がペアになって産卵床を守りに帰って来
ます。初めて生で見るニジマスの産卵後の姿は感動的なものでした。
ニジマスの孵化を確認するために洞川を訪れたのは翌年の5月でした。東京都
水産試験場の加藤憲司さんの協力を得て詳しい学術調査を開始しました。
山上川・洞川の禁漁区内でニジマスの稚魚は3センチから5センチ程度に成長
して浅瀬で泳ぎ回っていました。温泉街のど真ん中で産卵した卵は見事に孵化し
ていたのです。さらに下流域で10センチあまりに成長した1年魚も確認されま
した。その他、分かったのは次の通りです。
ニジマスはいつやって来たのか。大正末期から昭和初期(1920〜193
0)に放流されたものと思われる。※地元のインタビューと水産庁の資料により
推察。
なぜここだけで産卵を繰り返し生息できるのか。放流とほぼ同時期に温泉街の
流域800メーターを禁漁区に定め、魚を保護してきた。結果、魚にストレスを
与えない。その他、上流の地下水により水温が安定していることや、周辺の生活
排水により水性昆虫が多いことなどが考えられる。
調査にあたった加藤憲司さんの話によると「天川村山上川に生息するニジマス
は学術的にも環境の面においても貴重な存在である。これからも保護を続け守っ
て行くことが大切である。」とおっしゃっていました。
なお加藤憲司さんの調査は学術論文として、学会に提出されます。
さて、ビデオの内容ですが、皆さんにご覧いただく前に簡単な説明をしておき
ます。
《アバンタイトル》※本編に入る
前のイントロ: 川に群れる、水中を泳ぐ、ユスリカにライズするニジマスの姿
をフラッシュバック。
《タイトル》『トラウトたちのサンクチュアリー・奈良県天川村』
《本編》悠々と泳ぐニジマス。地図で天川村の所在地、ニジマスの生息する洞川
温泉を取り囲む環境を解説する。
・ナレーション: 天川村は女人禁制修行の山で知られる大峰山のふもとにある
静かな山間の村である。村を流れる天の川、その支流は美しい渓谷が続く。年間
を通して観光客が訪れるが、特に渓流解禁となる頃にはフライフィッシャーマン
の姿も多く見られる。※など以下ナレーションで説明する。
全体の構成は、ニジマスの生息環境、いつやって来たのかをインタビューとナレ
ーションで説明、ニジマスたちは何を食べているのか、どんなふうに産卵をして
いるのか、一年を通しての状況を映像で説明。産卵、孵化の実証を加藤憲司氏の
リポートで解説。
・まとめ: 全国的にも貴重なニジマスの自然繁殖地、天川村。この川と同じよ
うな環境が保たれればもっとトラウト達が産卵を繰り返すすばらしい川が増える
はず。トラウトフォーラムからの提案を含めてのメッセージでビデオは終わる。

今回の撮影取材で感じたことですが、魚を密漁や必要以外の捕獲から守ってや
れば確実に増えて行くものである事を痛感しました。また最近の釣りブームで訪
れる釣り人も増え、フィッシャーマンのマナーも低下していると漁協関係者の方
から聞いています。フィールドを汚すのは魚たちの環境を悪くすることになるの
は当たり前です。いつ来てもきれいな環境を作り、保つことはフィッシャーマン
の努めです。なお、天川もフライ&ルアー専用区の構想があるそうです。まだ
数々の問題があり、すぐに実現するとは言い切れないそうですが、将来は専用区
を設けたいようです。実現の為にTF関西プロジェクトもバックアップするつも
りです。
[連絡先]
関西プロジェクト 柳川 利夫
(ビギナーズラック内)
TEL. 096-368-0390
FAX. 096-368-0552
<お問合せ先>
トラウトフォーラム事務局
〒206 東京都東大和市南街5ー1ー18
メゾンM&Y101号室
TEL&FAX 0425(65)2268
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