COVER COLUMN3

シーズン最後に黒部川へ行ってきた。

里見 栄正(TF代表)

別に決めているという訳ではないが、ここ数年、シーズン最後の釣行は黒部川ということに なっている。とはいっても排砂問題で、すっかり有名になった、あの下流部ではなく黒部ダムよりも上流の、 人間社会とはほとんど無縁の流れである。
 しかし、そんな人の手が入っていない筈の流れでさえ、本流も支流も土砂の流入はひどく、砂に埋まったポイ ントが少なくない。
 黒部川流域は、もろく風化し易い花崗岩質ということもあって、雨が降る度に崩落を繰り返し、状況は決して 良好とは言えないばかりか、確実に、しかもかなりのスピードで悪化している。
 これを見る限り、釣り場環境の悪化は、開発等の人間の手によるものが全てというように僕自身も思い込んで いたフシがあったものが、必ずしもそうではなく、自然の力によるものの方が、時にはずっと影響が大きいもの なのだとも感じた。
 当然、アンチ堰堤派ではあるが、『砂防ダムでも作らないと……』という思いが、一瞬頭をよぎったのも事実。 このままでは、あの巨大な黒部ダムでさえ、流入する大量の土砂で、予想よりもずっと短い期間のうちに、砂に 埋もれてしまうのでは、と思わせるのに十分な状況なのだ。もちろん、下流部にあるダムも同様であり現実に 湖底の砂が満杯状態になったから、排砂という行動に出たのだが、それが流れを回復のメドさえ立たないほど荒 廃させてしまったのは周知の通りだ。
 ならば、他にどんな方法があったのだろう……とも考えた。排砂を是認する気は毛頭ない。しかし、根本的に は、当然の予測があったにもかかわらず、様々な思惑や利害が絡み合って、今日こうした結果になってしまったのだ、 と言える反面、僕のような流域住民ではない人間には伺い知れない事情が多くあるのだからまァ……という弱気の部分が入り混じって複雑な気分にもちょっぴりなったのも事実。  そう考えると、下流部の惨状だけでなく、上流部で進行している土砂の流出と推積に対しても、行政、電力会社 、もちろん我々釣り人も明確な対応策や解決策は見い出せないだろうし、現状ではそれぞれが無力に近いように も思える。
 ただ、責任の所在を過去に押しつけ、将来は予測不能と放棄する。現状はというと、そのどちらか都合の良い 方に封じ込めてしまおうという体質が変わらない限り、何ひとつ、具体的解決をみることがないとはいえる。
 そして似たようなケースは黒部川にとどまらない。しかし、根が深く、スケールも大きな問題に対しては、 僕個人としてもトラウトフォーラムとしても、どのようなスタンスでどう行動を起こして行ったらいいのか。 ……夜になっても、僕はずっと、そんなことを考えていた。


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