トラウト フォーラム ジャーナル 1996 NO.10


地域の実情にあった望ましい釣り場作りを。里見 栄正(TF代表)
トラウトフォーラム代表部会「集中討議」
熊本の会員 C&R区間設定に動き出す!
トラウト・アンリミテッド(TU)って何だろう?−第6回。川野信之(神奈川県)


地域の実情にあった望ましい釣り場作りを

里見 栄正(TF代表)

抱えている問題、不満に思うことや憤ることは、TF会員なら皆同じ……である筈 がないことは、ちょっと考えればわかることだし、TFJの「会員の声」にしてしかり。

 ただ、ごく狭い範囲や、直接自分が関与している部分しか目に入っていない時には、どうも錯覚を起こし易い。

 いずれアンケート等で、もう少しはっきりとした姿が見えてく るだろうが、例えば釣り場そのものに抱くイメージ、望むこと等を取り上げても、かなり地域特性があるようだ。僕は関東の人間だから、釣り人が多く場荒れぎみ、とか魚が少ないといったことがまず浮かぶ。

 そして、そこから導き出される望むべき釣り場とは、 といえば、非常に短絡的だが、まず魚が沢山いること。できれば稚魚放流か自然再生産されたピンシャンということだが、いつ行ってもソコソコ釣れるなら成魚の濃密放流でも、というように満たされない釣欲をどうにかしてくれ、になりがちだ。

 首都圏を中心と した釣り人の意見は概ねそんなところだろう。だからかもしれないが、どこへ行っても、ついそんな論法をふりかざしそうになる。

 ところが、少し関東を離れてみると、また違った意見が少なくない。ある程度魚の絶対量に恵まれ、釣り人の数もあまり多くないという地域も少なからずある。そんな地方に住む釣り人は、魚が釣れないとか、近い将来釣れなくなるかもしれないということに対しては、案外危機感を持っていなかったりする。

となると、もっと放流だ、キャッチ・アンド・リリースだ、ということ以上に、水質 や無意味な河川工事、在来魚と放流魚の問題といったことが身近で重要な課題として論議される訳だ。

 同様に漁協や行政の考え方や対応にも地域特性が多分にある筈で、実際に僕が関わった例でも、こちらの話さえまともに聞いてくれないところからのスタート。話だけ聞いてくれたところ、すぐに何らかのリアクションがあったところもあれば、一向に動かないところと、これ様々だが、最初にその辺りを踏まえておけば、無駄な時間を費やさずに済んだと思えるところもある。 

今後出てくるであろう新しいプロジェクトや その他の活動も、そんな地域ごとの実状に即したものを、その地域の会員を中心として展開していければ、個々の成果はもちろん、相乗効果で、あれよあれよという間に、時代が変わったと感じられるくらいになる……んじゃないかと。 

甘いと言われるかもしれないが、そう思って頑張りましょう


緊急報告!

トラウトフォーラム代表部会「集中討議」

先日、宮田、藤井、小川(由)の3名の代表部会員により、「集中討議」開催の動議がありました。現在ほぼ月に1回、東京・新宿で通常の代表部会が行われています。しかし、時間的制約等により十分論議を尽くせない議題もあり、また、今後のトラウトフォーラム全体の活動にかかわる懸案事項もいくつか上がってきています。そうした問題に関して、今回の集中討議は「とことん話し合い、満足できる結論を与える」ことを目的に、以下の議題を設定し開催されたものです

日 時)1996年7月20日(土) 13:00〜23:30
場 所)長野県・八ヶ岳原村「ペンション・オルガン」
参加者)里見栄正・小川由宏・宮田 匠・
藤井秀之・渡辺訓正 (代表部会員)
中沢 孝(顧問)
伊藤哲男(前代表部会員)
落合 順(東京都)
末永大也・大谷 新(TFJ編集局)
木住野勇(事務局)         (敬称略)

1.トラウトフォーラム活動基本方針の策定

【議題提案理由】  TFの基本趣旨には、テキスト等に記されているTF憲章がある。しかし、会員以外の人間には、その具体的な目的が見えにくいというきらいがあった。TFの活動目的に対する外部への統一的な返答の必要性が生じている今、憲章をより具体的かつ明確な基本方針として策定していきたい。

【決定事項】 「地域による釣り・釣り場観の違い」「C&Rの持つ意味」「環境問題との関連等」等、基本方針決定のためにクリアすべき数多くの議論がなされ、最終的に決定された基本方針は、次の通りです

「TFを国内の河川・湖沼において、トラウトの自然再生産の場回 復に向け、環境問題を含めたよりよい釣り場づくりをめざす団体と位置づける」
「魚を多獲せずに楽しめる釣法を推進する」
そのうえで
上記項目達成への手段としてフライフィッシングを位置付ける」
さらに、この基本方針を現実化する試みとして、
「TFとして、翌年度より3カ年計画で会員からC&R区間の設定可能河川の推挙を得る」
という具体目標も追加決定されました。

2.年度総会の開催。開催方法の検討

【議題提案理由】
 いままで以上に会員の意見を積極的に取り上げていくための総会を実施したい。そのためより会員が参加しやすい形態を考える

【決定事項】
「日時を固定して、参加予定が立てやすいようにしたい」という発案者の意見に基づき、

「毎年1月の最終土・日曜日に「総会」を開催する」
 という決定がなされました。  またイベント・セミナーもこれまで通り開催していく予定です。

3.コクチバス問題について

【議題提案理由】
 マスメディアでもさかんに報じられているコクチバスの不法放流。TF会員が、FFの対象魚でもあるこの魚に関する意見を求められるケースも発生している。組織としての統一見解を決定しておきたい。

【決定事項】

「コクチバスの新たな移植・移入を認める意志はない」
 この問題に関連して、マスメディアにおけるコクチバス問題の取り上げ方や、他の外来魚に対する関して、参加者の活発な議論が展開されました。
その結果TFとしては、
「現在、公的に認定されている地域での放流については特別な問題がない場合、これを是認する」
「不法放流へ関与する意志を持たない」
との合意が得られました

4.その他

 代表部会員より提出された3つの問題について話し合われ、以下の原案を得ました。
  1. 代表・代表部会の役割・機能について
    ◎代表の任期や役割についてあらためて検討する。同時に人数・役割・システム・任期を含めたよりベターな代表部会の体制創出を今年度中に行う。

  2. 遠隔地会員へのフォロー
    「現在、首都圏が圧倒的多数の会員構成のため、他地域に住む会員がイベント・総会に参加できる機会もきわめて少ないのが現状。そこで各地方に住む会員の参加意欲を高めていきたい」という趣旨のもとで、以下の提案がなされました。  
    1. 全会員が参加できる「釣獲実態調査」の結果を定期的に報告する。調査協力者の発 表なども行っていく。  
    2. TFとして、各地方におけるデータ・情報提供など、全会員が協力できる活動を今 後さらに充実させる。  
    3. 地方ミーティングを開催する。その際、各地方の会員にそのための情報提供、運営 等の協力を乞う。

  3. 渓流魚放流に対するスタンス
    「TFとして放流資金は一切出さず、放流には関与しない」
     会員の個人的な放流の際には、魚種選定(その川に棲む本来の魚かどうか)等適切な方法で行われることを希望する。また個人放流の場合はTFの名の元には行わないこと。  

以上、「集中討議」の報告に関するご意見や疑問点などがありましたら、事務局までハガキかFAXをお寄せください。 後日、代表部会によって、全会員に対し各議題の決定事項に関するアンケートを実施する予定です。

※「プロジェクト通信」でお送りいたしました集中討議報告を一部改めて掲載しました。(報告:編集局 大谷)


熊本の会員 C&R区間設定に動き出す!

「トラウトフォーラム殿
(前略)熊本のトラウト事情もご多分に漏れずよい話はなく、谷は荒れ魚は少なくなるばかりです。これはもう自分たちでなんとかするしかないと感じているフライフィッシャーが集まりキャッチ&リリース区間を作ろうということになりました。トラウトフォーラムの協力を得て、川辺川(または熊本)プロジェクトとして事業をすすめていければと考えております……」 

熊本市在住の会員宮崎亨さんより、球磨川水系川辺川におけるキャ ッチ&リリース区間設定に向けた活動を開始した旨のお便りが事務局へ寄せられました。

 川辺川は球磨川最大の支流で、平家伝説のある秘境・五家荘と「五木の子守歌」で有名な五木村を流れる川。現在、ダム建設が進んでおり、キャッチ&リリース区間は、ダム予定地より6〜7km上流、五木村を流れる3〜4kmを想定しているのだそうです。  

五木村役場内での協力者(フライフィッシャー)も得て、今後「完全なキャッチ&リリース区間」をめざし活動をつづけていくとのこと。
「場所の選定は水量・水温が安定してトラウトの生育に適し、釣り人を受け入れるキャパシティがあり、かつ餌釣りと比較的バッティングしにくい中流域を選びました」  

今後、TFでは、宮崎さんたちの活動を全面的にバックアップしていきたいと考えています。

九州のみなさん、トラウト情報をください!
 TFJ次号では、特集の一環として九州地区の河川を取り上げる予定です。そこで、九州地区における会員の活動の情報、および河川の現況などを事務局宛にお寄せください。実は、現時点で把握している九州地区の情報があまりにも少ないのです……。 
また、宮崎さんたちの活動についても、次号で引き続き取り上げる予定です。 ご期待ください。(文責:編集局 大谷)
 

トラウト・アンリミテッド(TU)って何だろう?−第6回

川野 信之(神奈川県)
米国にワイルド・トラウト・シンポジウムという会議がある。これは、野生の鮭鱒を守り、はぐくんでいくための会合で、5年に一回開催される。その第一回大会以来、TUは主催者として関わってきている。今回はこの会議−あるいは学会と呼んだほうがいいかもしれないが−について紹介しよう。
この会議が最初に開催されたのは1974年で、主催はTUと米国内務省だった。
第2回大会は新たにFFF(Federation of Fly Fisherman)が主 催者に加わって1979年に開かれた。第3回大会は1984年に開かれ、米国農業森林省が主催者に加わった。第4回大会は1989年、米国環境保護局と水産事業団も加わって開催された。  
第5回は1994年にウェストイエロ−スト−ン町において開かれ、筆者はその会議の直後に同町を訪れたので、残念ながら会議には出席できなかったが、そのかわり、会議が開催されたフライフィッシング博物館においてあった第4回大会の発表の記録”ワイルド・トラウト W”を入手することができた。  
この本は、A4版233頁で、その中にはシンポジウムで発表された40の講演がすべて掲載されている。多くは学術論文形式で、文献もきちんと引用されている。この本の論文のタイトルを紹介すればワイルド・トラウト・シンポジウムがどんな会議なのかということが見えてくると思う。     

*    *    *

「ワイルド・トラウト W 目次」

開会の挨拶

基調講演(以後演者は略)

大きな構想

魚のおちいっている苦境
自然火災や干ばつと野生の鱒

観察とその結果

お金とセンス

特別貢献講演

    *    *    *

 目を通されて、内容の豊富なことに驚かれた読者も多いと思う。僕も、翻訳しながら〈ウウムッ〉と唸ったものだった。5年に1度の会議とはいえ立派な発表が多い。  
興味をひかれて発表者の肩書きを分類してみた。50パ−セントが政府・州の役人(日本での水産試験所の職員などを含む)で、30パ−セントが大学教官で、残りの20パ−セントが特に肩書きがなく”釣り人”と思われる人だった。日本の状況となんと違うことだろう! 日本では、漁協に管理が任されてきたわけで、日本の漁協がこの本に載っているような調査・発表ができるとはとても思われない。つまり、日本には信頼できる河川の魚類調査は過去にはほとんどないと言っていいだろう。かろうじて水産省にはいくばくかのものがあると聞いているが。 

なお、次回の本連載で、この本の中の講演の一つを翻訳してみようかと思っております。どの講演がいいか会員のご希望を考慮しますので、編集部までご一報ください。

写真提供:川野信之 
    「WILD TROUT W」より


更新日時: Sunday, October 20, 1996
<お問合せ先>

トラウトフォーラム事務局

〒206 東京都東大和市南街5ー1ー18 メゾンM&Y101号室 TEL&FAX 0425(65)2268

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