アウトドアの達人が今月からアウトドア道具を通した

アウトドアよもやま話を連載していきます。




施 勝彦(しい・かつひこ)

 1955年生まれ。各種ネイチャースクールやアウトドアライフをテーマにしたプロデューサーと して活躍。釣り、ダイビング、登山、クロスカントリースキー、アウトドアクラフト&クッキ ングなど幅広い知識を持ち、テレビ、雑誌などあらゆるメディアでアウトドアの達人として活 躍している。著書に「親と子のキャンプガイド」(学研)がある。現在RVマガジン(徳間書店) にて物づくりを連載中。


第1回 道具編・刃物「サバイバル道具」

 インターネット読者の皆さん。今月からデジタルな紙面を使って、私が使う道具達を紹介します。 アウトドアの楽しみは非日常を楽しむもの。最近、アウトドアブームで驚くほどの道具が販売され、 キャンプに行くのに引越しかと思うほどの荷物を持ち運ぶ人たちが多い。
 日頃、色々な物事に囲まれ、道具を所有することすらストレスになる生活を過ごしているのに、 キャンプにいく時すら日頃の生活感から逃れられない人達の多い事だ。キャンプに快適を求める 気持ちは分かるが、非日常を楽しみにフィールドに出かけようではないか。
 達人の道具学は道具オタクの為のページではない。人に自慢をする物ではなく使える道具だけを 選んだ。
 パソコンのようにキーボードにコマンドを打ち込む事で仕事が出来てしまうと、偉大な 手の存在を忘れてしまう。2本の手はキーボードから、単純な刃物に持ち変える事で創造性を持ち、 新しい道具を作り出すことが出来る。


 人は火と刃物によって文明を作り出した。今回の道具学は刃物、刃物には大きく分けてふたつの 製造方法がある。いまアウトドアショプにて販売されているナイフのほとんどの物が、このス トック&リムーバル法で作られている。
 まずハガネ板を刃物の型に切り出し、グラインダーとヤスリを使いナイフの完成型を作る。ここ まではハガネに焼き入れをしていないので金属としては柔らかく加工がしやすい。
 削り上がったナイフ完成型をコンピューター管理の熱処理釜に入れて焼きを入れる。この方法だ と特別な技術をあまり必要としないでナイフの量産が出来る。
 ナイフに使用するハガネの種類によって金属の硬度が変わる。堅ければ刃持ちも良いが刃が欠け やすく研ぎにくい。硬度が低ければ刃持ちは悪いが欠けにくく研ぎやすい。実際は刃物の硬度は かなり好みに左右される。
 ただ硬度の堅いナイフは自分で研ぐ事が難しい。堅ければ切れ味が良いわけでもない。ふたつめ の製造方法は日本古来の鉄と鋼を炉で熱してハガネを包み込むように叩き込み、鋼を鍛え上げる匠 (たくみ)の技を必要とする方法だ。代表は日本刀だ。日本刀は鉄を鍛える事で粘りと硬度の二面 性と刃物としての美を得ている。





 同じように鉄とハガネを鍛えあげて作る、シリアのダマスカスに由来するダマスカス鋼がある。 2種類の金属が油膜のように金属の面に模様を描く不思議な鋼だ。一般の人ではほとんど、こんな 金属で出来たナイフを見たことがないと思う。2種類の金属を幾つも重ね合わせ、炎で鍛え上げた 鋼板をねじり、飴のように伸ばし、熱してお互いの長所が混ざり合った鋼板として仕上げる。非常 に高度な技術を必要とする刃物素材だ。

 アウトドアにおける刃物は実用と趣味の部分がある。どんな場所でどう使うかによって違う。家 に飾る、コレクションでナイフを持っていても仕方がない。

 次回は、使い道で選んだ逸品を紹介したい。


写真−1:新潟県、与板町は大工刃物の町、ダマスカス鋼を打つ、鍛冶屋、古見氏の所を訪ねる
写真−2:ダマスカスハガネは金属を重ね合わす
写真−3:重ね合わした物を丸くねじり、板状に打ち直す
写真−4:出来上がったダマスカス鋼で出来たナイフ
写真−5:どんなに良い鋼でも研がなくては切れない

達人のよもやま話、サバイバル道具パート2「使い道で選んだ逸品」
達人のよもやま話、サバイバル道具パート3「ナタ」


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